俺様富豪と甘く危険な恋
「そういう誤解をさせるのはよくありませんよ」


スマホを受け取ったダニエルは渋い顔で忠告する。


「ならばいいアイデアを考えろよ」

「すべてを話してしまうのが一番です」


蓮は眉根に深くしわを寄せると、グッとスコッチを飲み干す。グラスが空くと、足りないとばかりにダニエルに差し出す。ダニエルは首を左右に振りながらグラスを受け取り、バーカウンターへ戻って行った。



その頃、栞南はバスターミナルからバスに乗り、窓の外を見ていた。時々、海が見える。

窓の外は懐かしい景色だった。

蓮のいるタワーマンションまであと10分ほどだ。栞南のドクンドクンと心臓が暴れていて、痛いくらいだった。バッグを握る手のひらはじっとりと汗ばみ震えている。

震える自分の手を見ていると、タワーマンションへ行くのをやめようかと思い始めてきた。


(こんなところまで来て話をしたがる女なんて……)


ここまで来て栞南の気持ちが初めて揺らいだ。

バスはどんどん山道を登って行き、下りにかかった。海や砂浜が見え始め、もうすぐ着いてしまう。


(ここまで来たんだからレンに会わなきゃ)

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