俺様富豪と甘く危険な恋
バスはレパルスベイの停留所で停まり、栞南は震える足でバスを降りた。

もしかしたら停留所に蓮が待っていてくれるかもしれない。淡い期待をもっていた栞南だが、その思いはすぐにシュンとしぼんだ。

白い屋根のある停留所に蓮はいなかった。

そこにいたのは金髪の赤ちゃんを乗せたベビーカーのそばに居るインド系の女性だけ。この近辺は上流階級が住む一帯だ。女性はお手伝いさんだと思われる。

がっかりしながら栞南は歩き始めた。

少ししてタワーマンションの入り口が見えてきた。そして右手には湾になったレパルスベイビーチと奥にちらりと見える天后廟(ティンハウミュウ)の寺院屋根。

これからのことに緊張している栞南は思わずそちらの方向へ足を向けたくなったが、グッと踏みとどまり、左に向かった。

回転ドアを抜けた栞南はその場で立ち止まる。ダニエルが立っていた。

蓮ではなくダニエルの姿に気落ちするのを否めない。

回転ドアから姿を現したはたから見ても痩せた栞南を見たダニエルは気の毒になった。

1ヶ月間、連絡が取れずに心配していたのだろうと。




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