俺様富豪と甘く危険な恋
タワーマンションを飛び出した栞南は天后廟(ティンハウミュウ)に向かっていた。
まだ心の整理がつかず、蓮の近くから離れる決心が出来なくて、バス停に向かえなかった。
ショッピングセンターの一面ガラス張りのフィットネススタジオは誰もおらず電気が消されて中が暗い。そのため、みじめな自分の姿がガラスに映し出され、目を背けた。
隣はオープンテラスのカフェを足早に通り過ぎ、思い出のベンチのところまで来てようやく足が止まった。
このベンチで蓮にビールをかけるいたずらをしたのを、昨日のことのように鮮明に思い出される。
甘い甘い幸せな時間だった。
(あのとき、レンと一緒にイギリスへ行けばこうならずに済んだ……?)
愛する人が出来たのなら、何も考えずに一緒に行けばよかったのだと後悔する。そうしていれば、今も幸せに笑う自分がいたはずだと信じて疑わない。
(でも、もうおしまい……)
その時――。
「待って!」
ベンチを前に立ち尽くす栞南の耳に女性の声が聞こえてきた。
「待って! カンナさん!」
右を向いた栞南は、高いヒールで近づいてくる女性に目をとめる。
「あなたは……」
ようやく栞南のところまで来たソフィアは「はぁー」と息をついた。
まだ心の整理がつかず、蓮の近くから離れる決心が出来なくて、バス停に向かえなかった。
ショッピングセンターの一面ガラス張りのフィットネススタジオは誰もおらず電気が消されて中が暗い。そのため、みじめな自分の姿がガラスに映し出され、目を背けた。
隣はオープンテラスのカフェを足早に通り過ぎ、思い出のベンチのところまで来てようやく足が止まった。
このベンチで蓮にビールをかけるいたずらをしたのを、昨日のことのように鮮明に思い出される。
甘い甘い幸せな時間だった。
(あのとき、レンと一緒にイギリスへ行けばこうならずに済んだ……?)
愛する人が出来たのなら、何も考えずに一緒に行けばよかったのだと後悔する。そうしていれば、今も幸せに笑う自分がいたはずだと信じて疑わない。
(でも、もうおしまい……)
その時――。
「待って!」
ベンチを前に立ち尽くす栞南の耳に女性の声が聞こえてきた。
「待って! カンナさん!」
右を向いた栞南は、高いヒールで近づいてくる女性に目をとめる。
「あなたは……」
ようやく栞南のところまで来たソフィアは「はぁー」と息をついた。