俺様富豪と甘く危険な恋
「ソフィアから聞いただろう? 話すことはない」

「ジャスティン・ラウの恋人が車に飛び出してきたことしか――」

「それで十分だ」


取り付く島がなく、最初に出会った頃の蓮に戻ってしまったように思えた。


(私じゃダメなの……?)


でもそう思うのはまだ早いと栞南は思いなおして、ダニエルが持ってきてくれたコーヒーで喉を潤す。

飛行機で飲んだコーヒーからかなり時間が経っていて、喉が渇いていてほんの束の間ホッとした。


「レン……」

「栞南、電話で伝えたことは本気だ。終わりにしたい」


近くにいたダニエルは思いがけない蓮の言葉に驚いて2人に顔を向ける。

栞南がマンションを飛び出して行ったとき、蓮は思い直したのではなかったのか?と思っていたダニエルだ。


「終わりにしたいのは、目が見えなくなったから? そのせいで?」

「不自由な男と一緒にいることはない」

「そんな風に言わないでっ!」


栞南は自分を卑下する蓮に息を呑む。




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