俺様富豪と甘く危険な恋
「ここへ来るとは無駄なことをしたな。もう話すことはない。ダニエル」


蓮はその場に立ち上がり、ダニエルを呼ぶ。

そばに控えていたダニエルはすぐ蓮のもとへ行き、腕を支える。


「2件電話をかける。書斎に連れて行ってくれ」

「はい」


さっさと話を切り上げて仕事を理由に行ってしまう蓮に栞南は腹が立ってきた。


「私、ホテル決まっていないんです。もう遅いから泊まらせてもらいます。このソファでかまいませんから」


栞南は納得していないが、自分たちがこんな結末になるとは空港で別れたときは思ってもみなかった。
ここへ来る時も少しは望みをもって来たのだ。


「……勝手にすればいい」


書斎に向かっていた蓮は足を止め、そっけなく言いドアの向こうへ消えた。

蓮の姿が見えなくなると、我慢して堪えていた涙が止められなくなった。ポロポロと涙が頬に伝わる。


(本当にもうダメなの……? レン……)


ソフィアが別れ際に話してくれた蓮は栞南を愛していると。だが、今の蓮を見ているとそう思えない。自信がない。


「レンさまの気持ちは固いようですね」


こうべを垂れていると、いつの間にかダニエルが戻ってきていた。涙を見られないように急いで拭うが、遅かったようでハンカチが差し出された。


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