俺様富豪と甘く危険な恋
「……このまま日本へ帰してしまっても良いのですか？」


蓮の心がわかっているダニエルは栞南を引き留めてくれればいいと考えていた。


「……それしかないだろうな。日本へ帰り俺のことは忘れればいい」


ダニエルは心の中でため息を吐く。


「もういい。栞南に食事をさせてくれ」


ほとんど料理に手をつけなかった蓮はガタンとイスを引いて立ち上がった。ダニエルが急いで介助しようとすると、そのまま寝室へ入って行った。

この距離なら不自由なく移動が出来るようになった蓮は寝室のドアを閉めて、中へ数歩進む。進んだ脚にベッドがぶつかり、柔らかいシーツの上に倒れ込んだ。

蓮は仰向けになり、脱力する。


「くそっ……」


こんな自分が歯がゆい。




食事をどうぞと、メイド室にいた栞南はダニエルに声をかけられた。

ダイニングテーブルへ行くと、蓮の姿はなかった。栞南はいつも蓮が座っていた席を見て、小さくため息が漏らす。


「明日は何時のフライトですか？」

「……夕方です」


（このまま帰ってもう二度と蓮と会わないなんてこと出来るのかな……）


食事をしながら、蓮の部屋の物音を確かめている自分がいる。今すぐ蓮の部屋のドアを開けて顔を見たかった。

その想いがこみ上げ、栞南の目頭を熱くしていく。気づくとブラウンのランチョンマットに染みを作っていた。
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