俺様富豪と甘く危険な恋
「そう言っても、レンさまに会いに来るのなら本物の愛だと思いましたから」

「試したんですね? ダニエルさん、人が悪いです」

「それはもうとっくにご存じではないですか?」


それもそうかと、栞南は笑った。ここへ来て初めて笑えた。そして、少し気が楽になっていることに気づいた。心が少し軽くなった感じだ。


(私はレンに愛されている……ダニエルさんやソフィアさんの言う通り信じよう)


「私、明日ちょっとお出かけしてから一度戻って日本へ帰ります」

「出かけるところですか?」

「はい。黄大仙廟(ウォンタイシンミュウ)へ。あそこはレンにご利益がある気がして」


蓮が以前、祖母とよく黄大仙廟(ウォンタイシンミュウ)へ来ていたと話してくれたことを思い出し、足を向けたくなったのだ。

黄大仙廟(ウォンタイシンミュウ)へ行って蓮のことをお祈りしたい。


「黄大仙廟(ウォンタイシンミュウ)ですか。たしかにご利益はあると聞いていますが、わざわざ――」

「行きたいんです。蓮のために少しでも出来ることをしてあげたいんです」

「わかりました。気をつけて行ってきてください」


ダニエルは頷き、キッチンの中へ戻って行った。



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