俺様富豪と甘く危険な恋
その夜、栞南はメイド室のベッドの上で眠れない夜を過ごしていた。


(レン、暗闇の世界で生きているレンは夜、眠れてる?)


蓮の部屋へ行って、好き、愛していると言いたい。でも、ダニエルの言う通り、今はそっとしておくのがいいのだろうとも思い、メイド室から出られなかった。

翌朝の6時過ぎ、栞南は少し腫れた瞼でリビングに行くと、キッチンにいたダニエルにやれやれと言うように首を振られる。

ダイニングテーブルに蓮が着いていないのを栞南は見て、内心がっかりする。姿だけでもみたいのだ。


「おはようございます。早いですね」

「おはようございます。これから行ってきます」


栞南は出かける用意をしていた。キャメル色のショルダーバッグを肩から下げている。


「もう……ですか?」

「夕方まで時間がないから。お昼すぎに戻ってきます。あ、お昼は用意しないでくださいね」

「なら朝食を食べてから行ってください」

「いいんです。急ぐので。行ってきます!」


栞南はにっこり笑ってダニエルに挨拶して玄関に向かった。



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