俺様富豪と甘く危険な恋
タワーマンションのエントランスを出てのんびりとした足取りでバスの停留所へ向かうが、遠くの方にバスが見えて慌てて走り出す。

バスとほぼ同時に停留所に着き、乗り込むと息切れを整えながら2階へ行く階段を上った。

2階建てのバスはやっぱり上の方が、見晴らしがいい。昨日バスに乗って少し慣れたから2階で景色を見たい余裕も少し出てきた。

中環(セントラル)のバスターミナルで降り、MTRで電車に乗り込むが、出勤時間で混み合っていた。なんとか乗り換えて黄大仙駅へやってきた。

まだ早い時間で観光客はまばらだ。

栞南はお線香を買い求めた。日本のものとは大きさが違く、かなり大きくて派手なお線香だ。

ガラス箱の中にある着火台でお線香に火を点けると、本殿へゆっくり進む。

栞南はかなり長く願をかけてから香炉にお線香を立てた。

お参りを済ませると、出口に向かう。栞南がお祈りをしている間に観光客が増えてきていた。


(早めに来てよかった)


そんな余裕な気持ち生まれて、階段を下りて少し歩いていた時だった。栞南は前を見て歩いていなかった観光客と避ける間もなくぶつかっていた。


「きゃっ!」


栞南は弾き飛ばされてコンクリートの地面にしりもちをつく。ぶつかった観光客の中年の女性は見ただけで行ってしまった。



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