俺様富豪と甘く危険な恋
蓮は身体に小さな衝撃を受け、それが愛おしい存在だと認識する。

栞南は蓮に抱きついていた。


「栞南? ケガをしたのか? ダニエル! 教えてくれ!?」


状況がわからない蓮は見えない自分に苛立ち声を荒げた。自分を抱きしめているのは間違いなく栞南だ。


「どこをケガしたんだ?」


蓮は眉根を寄せて栞南を見下ろしている。それはまるで私が見えているように思えてしまう。


「レン……転んで手のひらを擦りむいただけで……」

「本当なのか?」


状況がわからず、苛立ちの表情を見せる蓮。


(私を心配してくれているの?)


「ダニエル、報告してくれ」

「そんなに心配なら、自分の気持ちに正直になればいいんです」


ダニエルの言葉に蓮がギクッと身体が揺れる。ハッと、自分の気持ちを悟ったかのように目を見開いている。


「レンさま、私は出かけてきます」


ダニエルは玄関の方向へ足を向け、ふたりの前からいなくなった。

< 276 / 369 >

この作品をシェア

pagetop