俺様富豪と甘く危険な恋
「レンは弱いダメ人間になんてならないよ」


栞南は首を左右に振る。


「……時間をくれないか?」

「時間……? 時間ってどのくらい?」


次の言葉が聞きたくて焦る栞南だ。


「俺に自信がつくまで。1ヶ月か……半年か……1年か……それはわからない。だから、待っていて欲しいとは言わない。好きな男が出来たら俺のことは気にせずに幸せになってほしい」

「私に好きな人が出来たら、レンはそんな簡単に手放せちゃうの? それだけの愛なの?」


簡単に言い切ってしまう蓮が栞南にはショックでもどかしい。


「レン! お願い! 何とか言ってっ!」


悲痛な栞南の声に蓮は苦悩の表情を浮かべるばかりだった。


「レンっ!」


返事に待ちきれず、重ねていた蓮の手を揺さぶった。次の瞬間、蓮は重ねていた手から腕を伝わり肩へ、そして栞南の両頬に移動させた。

蓮の体温が手から頬にしっかり伝わってくる。


「レン……?」


蓮の顔が近づいて――

唇が重なった。

何もかも欲して飲み込んでしまいそうなキスではなく、静寂に包まれるような、蓮の栞南への気持ちがすべて伝わってくるものだった。

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