俺様富豪と甘く危険な恋
そんなキスを受けていた栞南は自分の想いは通じているのだと、涙が溢れ出てきた。


「栞南……泣くなよ。お前は簡単に手放せる存在じゃない。ただ……選択肢を残してやりたいだけだ」


頬を包んでいた指でそっと涙を拭う。


「私の気持ちがレン以外の人に行くなんてことないよ……ずっとそばにいたいの……」

「栞南、愛している。だから、わかってほしい。俺に自信が戻ってくるまでだ」

「レン……」


(どうしよう……もうすぐ帰るなんて出来ない……)


予約した飛行機はあと1時間以内にここを出ないと間に合わない。だが、栞南は蓮と離れたくない。

蓮の手は栞南の頬を撫でている。撫でているが、栞南の顔を確かめるような動きでもある。

栞南はその手を掴み、自分の口元へ持っていく。


「レン……も、もう1泊……しても……いい?」

「……明日、帰ると約束してくれるなら」

「レンっ! そんなに帰ってほしいのっ!?」


栞南は悲しくなって蓮の手を離すと、立ち上がっていた。


「栞南!」


蓮は栞南がいた方向へ手を伸ばす。栞南は伸ばされた手を無視できない。下ろされないうち、自分を探す手を掴む。

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