俺様富豪と甘く危険な恋
「栞南!」


背を向けた栞南の腕が捕まれ、引き戻される。


「落ち着けよ」

「落ち着けよって、もうっ! 信じられないっ!」


クルッと振り向かされた栞南は眉をしかめて蓮をにらむ。


「お前が怒ると怖いんだ。説明するから、落ち着いてくれないか?」


蓮の目が見えること以上に喜ばしいことはない。栞南は小さくため息をついてから、ベッドに座った。


「角膜移植を話さなかったのは100%の確約がなかったからだ。手術がいつになるかわからなかったし、不適合や失敗する確率は高い。お前に話して望みをもたれ、目が治らなかったら? お前は俺以上に傷つくかもしれない。そう思ったら話せなかったんだ」


蓮の言い分は理解できる栞南だが、やはり話してくれなかったことが寂しい。


「治らなかったら……一生、来てくれなかった……?」

「いや、治らなくても迎えに来るつもりだった。ただ、お前に期待をもたせたくなかったんだ。傷つくのは一度でいいだろう?」

「レン……」

「お前の顔をよく見せてくれ」


蓮は栞南の隣に腰を下ろすと、顎に手をかけよく見ようとした。



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