俺様富豪と甘く危険な恋
ふたりは友人だったというだけで、ほとんど知らない。

別行動の方が都合いいと考えたのだ。案の定、行きの旅客機では大学の思い出話に花を咲かせることもなかった。

彩は香港の金融機関で働いている恋人の話を、ひとり身の栞南に到着までのろけた。いや、到着後も迎えに来た恋人を紹介され、ふたりの甘い雰囲気にひとり身の栞南には少々ツラいと感じた。

彩はまだ日本へ帰らず、恋人の元で数週間滞在する予定で、栞南は短い3泊4日の香港旅行。

ホテルチェックアウト後、出発までまだ4時間ほど時間があり、せっかくの旅行で病気になった栞南を気の毒に思った彩が香港での最後の食事に誘ってくれている。

エレベーターでロビーに降りて、フロントカウンターに向かっていると、明るい声で名前を呼ばれた。


「栞南!」


足を止めて声のした方を向くと、ロビーのソファに深く座った彩が手を振っていた。

真っ黒な髪を肩甲骨までのストレートにしている見た目クールビューティーの彼女。

職業はネイリスト。大学在学中にネイリストの資格を取得していた。

長い爪は個性的にネイルされている。


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