俺様富豪と甘く危険な恋
「目が見えなかったとき、この顔をいつか忘れてしまうことだけが怖かったよ」

「レン……もういいの……来てくれたんだから、もういい」


栞南はぎゅっと蓮に抱きついた。


「どうしてここにいるってわかったの?」

「ソフィアからだ」


ソフィアと会って以来、栞南は時々メールをする仲になっていた。蓮の様子も聞けたが、手術のことも知っていたであろうソフィアは何も言ってくれなかった。もちろん蓮に口止めされていたのだろうが。
しかし、栞南の様子や行動はソフィアから蓮へと筒抜けだったようだ。


「どうして元カレ……孝太郎に挨拶したの? 約束って? 俺はお前の魔法使いって?」


わざわざ名刺まで渡して挨拶する必要などない。栞南には腑に落ちなかった。


「お前が酔っぱらったときに言っていたんだ。元カレを見返してやりたいと」

「えっ?」

「寝言でな。その時、俺は約束を守ると誓ったんだ。なかなかのタイミングだっただろう?」

「そんなこと寝言で言っていたなんて……」


会社の同僚や先輩たちがいて、絶妙なタイミングだったと思う。彼氏がいると強がっていると思われていたから、子供じみているが蓮の登場に優越感を覚えた。




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