俺様富豪と甘く危険な恋
スーツケースを開けてパジャマを取るのが億劫で、栞南はベッドメイキングされたシーツを剥がしてそのままもぐりこむ。


(私、どうなっちゃうんだろう……)


ひとりになると心細くなる。ベッドサイドのライトを点けていないと不安でたまらない。


(犯人が捕まらなければ、私の命はずっと狙われ続けるの?)


なんてことに巻き込まれてしまったのだろう。

彩を恨みつつ、うかつに引き受けてしまった自分が情けなく世間知らずだったと後悔している。

拉致されリッツ・カールトンの部屋で目を覚ました時から、ずっとずっと後悔しっぱなしなのだが。

涙が堰を切ったように流れ出てきて枕を濡らしていく。

鼻水まで出てきて、涙でかすむ目を拭き拭き、バッグからティッシュを探す。

ベッドの上で体育座りのまま声を押し殺して泣く栞南。

悲しくて不安な感情を押さえられない。

この部屋の壁がどれだけ薄いかわからないが、泣いていると思われたくない。ぐずぐずする鼻水も音をたてないようにしていた。


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