俺様富豪と甘く危険な恋
「俺じゃない。俺は仕事で四六時中一緒にいられないからな。トニー!」


蓮が名前を呼ぶと、リビングのソファに座っていた黒スーツの男がやってきた。

中国系の見たところ、栞南と同じ20歳代半ばのように見える。スーツを着ていても腕の筋肉が盛り上がっている。身長はそれほど高くなく、170センチと言ったところだろうか。


「トニー・趙(チョウ)だ。お前のボディーガードだ」


トニーはニコリともせず、姿勢正しく立っている。短髪の髪は黒く日本人にも見えるが、トニーと聞いて栞南は挨拶に困り上ずってしまう。


「な、ナイストゥ――」


英語で挨拶をしようとすると――


「私は日本語が出来ます」


栞南は心の中でホッとした。そばに居るのに意思の疎通が出来ないのではと焦ったからだ。


「よかった! 水野栞南です。よろしくお願いします」


栞南はぺこっと頭を下げる。


「俺は出掛けてくる。他にもボディーガードを残していくから安心しろ」

「分かりました」


蓮がこれから出掛けると知り、栞南の気持ちが一瞬にして落ちる。

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