俺様富豪と甘く危険な恋
課長は外国の病院で手術、入院しなければならないことを気の毒に思ってくれたようだ。海外保険の関係もあるから、診断書は必ずもらうようにと念を押される。

「また連絡します」と、電話を切った栞南は罪悪感でいっぱいで泣きたくなった。


「診断書だなんて、どうするの……?」


半月も会社を休むのだから、それなりの手続きは必要だ。結局、日本へ帰ったら会社を辞めなくてはならないのかもしれない。

肩がガクッと下がり、口からは深いため息が漏れる。


「それに……領事館へ行く話がうやむやになっちゃったな。でも、総理が来る予定があるのなら、朝日奈さんの言った通りになるかも……」


その時、まだ手に持っていた携帯が突然鳴った。


「きゃっ!」


心臓が止まるくらい驚いて、携帯の着信の名前を見て金縛りにあったように動けなくなる。


電話は彩からだった。


出られるわけがない。栞南は震える手で鳴り続ける携帯を持ってリビングにいるトニーの元へ行った。

< 46 / 369 >

この作品をシェア

pagetop