俺様富豪と甘く危険な恋
ブラックフォーマルスーツが良く似合う体躯。

信じられないほど色気があり、危険な雰囲気をどことなく匂わせている男性を近くで見るのは初めてだったせいかもしれない。

その時の栞南の心臓は、暴れたまま静まることがなかった。

だけど隣に座った男女は楽しそうなカップル。アジアンビューティーな連れがいる彼なのに胸をドキドキさせてしまった自分はひとり寂しく、景色を見ながらの食事で惨めに思えた。

その後、景色が素晴らしいとガイドブックに載っていた最上階のバーでひとりカクテルを飲んでいると、金髪の男性がしつこく「一緒に飲まないか」と誘ってきた。

不機嫌に断っても金髪男性は引かない。困ったところへ助けてくれたのはさっきの男性だった。

レストランで会ったときは国籍不明の東洋人。

助けてくれた時は英語だが、栞南に話しかけた日本語。日本人のような発音の日本語だったが、整いすぎている容姿に彼が日本人なのか不明だった。

しぶしぶ去っていく金髪男性にホッと安堵し、栞南はお礼を言い、頭を下げるのが精一杯だった。

美しい彼を思い出していた栞南はそこでハッと我に返る。

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