俺様富豪と甘く危険な恋
「会社に電話をしたあと、彩から電話があったんです。でも怖くて出られなくて……」


画面に出た彩の名前をみただけで、恐怖心が沸き起こった。


どうしてこんなことをしたのかはあえて聞かないが、謝ってほしい気持ちもある。

だが今は話す勇気がない。

それに理由を聞いても計画の一部に利用しただけだと言うだろう。運び屋を探していたところへ栞南と同窓会で会ったからと。


(謝ってほしいけど、話すのが怖い……)


栞南の瞳が不安げに揺れる。


「だろうな。酷い目に遭わされたんだ。奴らのことは忘れろ。奴らのボスを捕まえるのも時間の問題だ。そうしたら晴れて自由の身にしてやる」


意外にも気遣うような声色だった。


「朝日奈さん……」


優しい言葉に栞南はわけのわからない感情がこみ上げてきた。

(この人がそばに居るという絶対的な安心感だろうか……)

気持ちが落ち着いてきた。


「もう寝ろ。あれから眠ったのか? まだブスな顔だぞ」

「たっぷり寝ても、ブスなものはブスなんですっ! 枕を投げられないうちに出て行ってください」


蓮にからかわれ、栞南の頬がぷくっと膨れる。そんな栞南に蓮は笑い、出て行った。

蓮の姿が見えなくなり、ドアが閉まっても栞南の落ち着いた気持ちはまだ続いていた。

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