俺様富豪と甘く危険な恋
「ごめん! 彩、今チェックアウトするから!」


栞南は小さく手を振って、彩に声をかけた。それくらいわかっていると言わんばかりに微笑む彩だ。

フロントカウンターの前に立つと、フロントの男性が小さく微笑む。

栞南はチェックアウトの手続きを済ませスーツケースを預けると、スマホを弄っている彩に近づいた。


「お待たせ」


栞南に気づいた彩はゆっくりと立ち上がる。ストレートの髪がサラッと肩を流れ美しい。

栞南はますます髪を伸ばしたくなった。


「体調はどう? 12時に予約入れてあるの。こっちへ来てまだ飲茶食べていなかったでしょ?」

「うん。もう大丈夫。飲茶、食べたかったんだ! ありがとう」


熱と腹痛は引いたが、まだ怠さは少し残っている。飛行機に乗ったらすぐに眠ってしまいそうだ。


「ヴィクトリア・ハーバーを見ながら食べられるところよ。景色、近くで見られなかったでしょう? 少しでも楽しんでもらえればと思って」


栞南は彩の優しさに嬉しくなり微笑む。


「ありがとう。飲茶もだけど、景色も楽しみだよ」


ホテルを出ると、何度も来ている彩は地元の人のように道を歩きはじめた。



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