俺様富豪と甘く危険な恋
栞南は身軽に階段を下りるトニーに付いて行くのが精一杯で、口を開く余裕がなくなった。

火災警報装置が激しく鳴る中、3人の階段を下りる足音だけが響いている。栞南は何かに追われるような恐怖を覚えながら駆け下りる。


(スニーカーで良かった……)


息を切らせながら、8階まで来るとマンションの住人達の姿が見え始めた。ようやくロビーに到着すると、栞南はトニーの手を離して荒い呼吸を整える。


「はぁ……っ……は……」

「完全な運動不足ですね」

「あ……っなた……たちとは……はぁ……ちがいま……す……」

「早く外へ出ましょう」


住人達はロビーの回転扉の横のドアからぞろぞろと出て行くところだ。


栞南もトニーに案内されて外へ出た。

外へ出てマンションを見上げてみるが、煙の出ている部屋は見あたらない。


「どこが火事? 部屋は大丈夫?」


周りにいる住人たちは心配そうに騒がしく話しながら、建物を見ている。

そこへ先に下りて確認していたボディーガードがふたりの前に現れトニーと話しはじめる。


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