俺様富豪と甘く危険な恋
「セレナーデ! 彩、ありがとう! ここに来たかったの!」


飛び跳ねんばかりに喜ぶ栞南に彩はそっけなく微笑む。


「それはよかったわ」


ドアを開けて、彩は英語で予約していることを店員に知らせる。


(何度も来ていると、感動が薄れていくのかな……)


喜ぶ自分がバカみたいに思えてきたが、それでもいいと、首を小さく横に振り栞南は後に続いた。


階段を上がり2階のフロアに丸テーブルが並んでいる。

ふたりはヴィクトリア・ハーバーと中環(セントラル)の摩天楼を見渡せる席に案内された。

注文は紙にチェックを入れるオーダー式。日本人が多く来るのだろう。日本語のメニューは写真付だった。


「あ、可愛い!」


栞南が指を刺したのは金魚の形の点心だ。


「飾り点心が日本人には有名だけど、現地の人はほとんど食べていないわよ。でも栞南のために来たんだから好きなものをオーダーして。彼のおごりだから」

「ええっ? 彼氏さんのおごり?」

「そうよ。せっかく旅行に来たのに病気になってしまって気の毒がっていたわ。あ、あと頼みたいことがあるのよ」


先にオーダーしたジャスミンティーが運ばれてくる。

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