俺様富豪と甘く危険な恋
(朝日奈さんは超高級なスーツを着ているからこのお店に入ってもぜーんぜん問題ないけれど、私は普段着なんだよ? 絶対に店員さんが嫌がるスタイル。着替えたかったのにっ)


ドアの両脇にはようやく顔を覚えたボディーガードが立っている。

蓮は不機嫌な表情の栞南をレディーファーストで先に中へ入れた。


「歡迎光臨(フンイングォンラム)――いらっしゃいませ。朝日奈さま、お待ちしておりました」


スーツを隙がなく着こなした男性は栞南が蓮に「なんで私から先に――」と文句を言っていることから日本人だとわかり、すぐに広東語から日本語へ変わる。


「ミスターリー、彼女の服と靴、そうだな。化粧品を頼む」

「朝日奈さんっ!?」


ミスターリーと呼ばれた男性はにっこり笑みを浮かべるが、栞南はぎょっと驚くばかりだ。


「かしこまりました。お嬢様、どうぞこちらへ」

「朝日奈さん、どういうことなんですか?」


(ここで高級な服を買うなんて……)


「3時間、貸し切りだ。好きなだけ選ぶといい」

「おかしいです! そんなことやめてください!」


高級ブランド店で買ってもらう筋合いはない。栞南は顔を真っ赤にして、ドアに足を向けた。


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