俺様富豪と甘く危険な恋
「一口で食べろよ。そんなに小さな口でもないだろう?」


ティッシュで親指を拭きながらのからかいの一言で、栞南の緊張がほぐれる。


(私の気のせい。朝日奈さんを意識しちゃうからそう思っちゃうんだ)


なんのためにここでシャンパンを飲んでいる理由がわからなかったけれど、車に戻った時にわかった。

トニーとダニエルがたくさんの紙袋をトランクに入れていたのだ。


「まさかあれ全部が私のじゃないですよね?」

「いや、そうだが?」

「あんなに持って帰れないですっ! スーツケースの重量の決まり知らないんですか? あれじゃ何個スーツケースを使うか……」

「庶民のクラスの重量など知るわけがない」


(ううっ……出ました。セレブ発言……)


「帰りは俺が飛行機代を持つんだ。お前には関係ないだろ?」

「持って帰っても着る機会が……」

「ほら、車に乗り込め。襲われるぞ」


一番恐怖を感じる言葉を言われ、栞南は一目散に車の後部座席におさまる。

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