俺様富豪と甘く危険な恋
「好きなものは?」

「えっ……え、えびです……」


反射的に言ってしまうと、蓮はメニューに視線を落としながら、そばに立っているウエイターにオーダーする。その姿は王侯貴族のような雰囲気を醸し出している。


(何をしても絵になる人っているんだ……)


今は命を狙われていることを忘れてしまいそうになる。しかし、ダニエルやボディーガードたちも2、3人に分かれて近くのテーブルに着いている。


(彼らは周りに気を配って、食事どころじゃないんだろうな)


蓮を見ればリラックスした様子でシャンパンを飲んでいた。


「ペニンシュラで食事が出来るなんて思ってもみませんでした」

「今日は誕生日だろう?」

「あ……」


日にちの感覚がなくて、自分の誕生日をすっかり忘れてしまっていた。


「どうして……?」

「俺は記憶力がいいんだ。好きなだけ食べろよ。ここは日本人シェフの創作料理で、俺が食べた中で一番うまいレストランだ」

「ありがとうございます。それは楽しみです……」


思いがけなく誕生日を祝われる。サプライズに胸がときめかないわけがない。

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