君のとなりで。
時間はあっという間に過ぎるもので、
気づけば7時を回っていた。

…意外と話が合うやつだ。

なぜ俺にはなから本性を晒したのかはわからないが、周りが思っている印象とは大分掛け離れたやつだ。

「んじゃ私そろそろ帰るけど。」

「ああ、俺も」

二人でレジへむかうと、当然のように俺が支払うのを待っている。

「望月さん?…これは一体」

「はぁ?奢りに決まってんじゃん」

ああ、なんて性格の悪い。

よくこれを完璧に隠してるもんだ。

仕方なく払って、駅で別れようとしたとき

「私と出かけたこと自慢してもいいけど、性格のことバラしたら殺すね。」

と、素敵な笑顔で釘を刺されてしまった。

「わかったよ。じゃあな」

軽く手を上げ、ホームに向かって歩いた。



「ただいま。」

誰もいないのはわかっているが、一応の礼儀として挨拶をする。

両親共働きで、殆ど家にいない。

リビングの明かりを付け、ソファに鞄を投げる。

テーブルの上には作り置きの弁当と、
明日の昼代。

弁当を温めてる途中、珍しく携帯が鳴る。

あいてはさっき連絡先を交換した望月。

しかも、電話。

「もしも」

「青葉?」

「っ」

俺の言葉を遮ったいきなりの名前呼びにドキッとしてしまう。

いやなにドキッとしてんだよ。

「…望月?」

「うん」

「…」

「…」

しばらく無言が続いた。

痺れを切らした俺は、聞いた。

「なんか、用?」

「…ブチッ…ツーツーツー」

「はっ?おい」

イタ電…か?

意味分かんねえ。

とりあえず温めた弁当を食べながら、
電話の意図を考えてみる。

…わかんねえよ。

なんだか体に疲れを感じた俺は、
風呂に入って寝ることにした。


ー望月。

布団に寝転がり少しあいつのことを考えていた。

ー独りが…怖いから

そう言ってたあいつの表情に息を飲んだ俺。

いやまああいつの事なんて心底どーでもいんだけど。

なんか、嫌いなはずなんだけどな。

嫌いっつーか、気に入らねえ。


そんなことを考えながら、
俺は意識をてばなした。
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