キングとナイト
「…お前に何が解るんだよ」

小さくなっていく、連夜の背中を眺めながら、呟いた。


家に着いて、何もする気になれなかった。

ベッドにねっころがり、目を閉じる。
浮かぶのは、夷隅の顔だった。

笑った顔、泣いている顔、怒った顔……。

「…夷隅っ」

今頃になって、ことごとく実感する。俺の中で夷隅は大きな存在だったという事を……。


『好きで生徒会に入った訳じゃない』

…わかってた筈だった。嫌がっていた夷隅を、無理矢理生徒会に入れた時点でそれは覚悟していた筈だった。

「……悪い事したなぁ」

俺は生徒会長という事を武器に、夷隅を縛り付けていた。

「解放してやるよ、夷隅」

俺は、そう決心した。
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