キングとナイト
「いいわけないだろ!」

そこにいたのは、兼田とか言う男と夷隅だった。

「私一人でよかったんだよ? 安いもんじゃない」

「よくねーよ!! なんで、お前だけが犠牲にならなきゃいけないんだよ……!!」

何の、話だ? もの凄く嫌な予感がする。
俺は息を殺して、なるべく気配を消した。

「犠牲なんて大層な物じゃないよ。ただ、戻っただけ。私が入学する前に……」

そう言って、空を仰ぐ夷隅。その姿があまりにも綺麗で、俺は見取れてしまった。

「……魅夜、好きだったんだろ? 神谷会長の事…」

耳を疑った。夷隅が俺の事を……好き?
そんな事、ある訳ない。だって、夷隅は俺に裏切りの言葉を投げ掛けた。

そんな奴が、俺の事を好きな訳ない。
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