キングとナイト
「魅夜サン。僕、荷物を部屋に置いてきますね」

クリスはそう言うと、リビングを出て行った。

そんなクリスの後ろ姿を見ながら、俺は、

「ムカつく……」

と呟いた。

「何がムカつくんですか?」

夷隅が俺の顔を覗き込みながら聞いてきたが、理由を言える訳もなく……。

「何でもねぇよ。それより、俺がさっき渡した手紙、見なくていいのか?」

と、ごまかした。

「そーいえば、見てない」

上手い具合にごまかせたらしく、夷隅は手紙を取り出し中身を読み始めた。

しばらくすると、夷隅は手紙を持ったまま固まってしまった。
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