キングとナイト
夷隅は苦笑いでそう言った。

「そんなのわかんねぇだろ?」

夷隅の言った事に納得出来なくて、俺はもう一度夷隅に言った。

「会長、ありがとうございます。元気づけようとしてくれて」

そう言って夷隅は、目を伏せた。

「名前を呼んでくれないんです」

「え?」

「父は、あの日から名前を一度も呼んではくれないんです」

……! そういえば、手紙も“お前”ばかりで、一度も“魅夜”とは書いてなかった。

「夷隅……」

寂しいかっただろう。実の親に名前を呼んで貰えないのだから。

「魅夜」

俺は、そう言って夷隅を抱きしめる。

「会長……?」

「俺が呼んでやる。お前の親父さんの代わりに名前をたくさん呼んでやる」

俺はこの時から、夷隅の事を魅夜と呼ぶようになった。
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