キングとナイト
「南 咲也」

短髪の人がそう言った。

「へ?」

「名前。俺の」

南さんはそう言いと、スタスタと歩いて行ってしまった。……見た目程、怖い人じゃないみたい。

私はそう思いながら、部屋のドアを開けた。



……暇だ。やる事がない。いつもだったら、生徒会室で会長や連夜先輩たちと喋ってるんだけどな。

そう考えると、胸が締め付けられた。

もう、会えないかもしれない。弥生に、連夜先輩。鼎先輩や皆川先輩にも会えない。

なにより、会長に会えない。

こんな事になるんだったら、思いを伝えておけばよかった。

『貴方が好きです』と。

たった一言、伝えたかった。
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