キングとナイト
「なぁ、夷隅。いつか、親父と話せる時がくるかな?」

そう俺が聞くと、

「えぇ、会長なら話せますよ」

と言った。

それから暫く、夷隅の肩に顔を埋めて泣いた。





「悪かったな」

ひとしきり泣いて、落ち着いた。

「いえ、気にしないでください」

制服を濡らしてしまったにもかかわらず、気にしていないようだった。

「夷隅、ありがとう」

いろんな意味をこめて、言ったら、夷隅はニッコリと笑った。

「っ…!」

夷隅自身は気づいていないが、モテるのだ。
普通に顔は整ってるし、なにより、たまに見せる笑顔はたまったもんじゃない。

「さようなら、会長」

そういって生徒会室を出ていく夷隅。
その後ろ姿を見ながら、

「まいったな…」

と呟いた。

たまたま、いい成績だったから目をつけただけなのに。

「ハマっちまった…」

夷隅、覚悟しとけ?

お前は、絶対逃がさない。俺の物にしてやるよ。
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