キングとナイト
「いてぇ! …優しくやれよな!」

流はそう言うけど、

「これでも、精一杯優しくやってますー!」

ムカついたので、ぐいぐい力を入れてやってやった。

「悪かった! 悪かったってば! 痛い、痛いよ。魅夜…」

泣きそうになりながら、流が言った。

流は、唇のところを切っていた。これが、以外と深い……。

「流、何で私なんかを庇ったの……?」

あのまま、私が殴られていれば、こんな事にはならなかったのに……。

「言ったら、テンパるから辞めとく…」

流はそう言って、私から目を背けた。

「…………」

言えとでもいうように、私は流を睨みつけた。

「……好きなんだよ」

流が、言った。

「誰が?」

それだけ言われてもわかる訳がない。
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