キングとナイト
夷隅は笑いながら言っているが、俺にはそれが辛そうに見えて……。

気付けば、キッチンに移動して夷隅を後ろから抱きしめていた。

「……会長?」

「……無理に笑うな。泣きたいなら、泣いてもいいんだ。だから、無理するな」

優しく夷隅を抱きしめる。
すると夷隅は、静かに泣き出した。

「〜ック、グス」

何かを我慢するように、夷隅は泣いた。
俺は見ていられなくて、夷隅を正面向きにして、抱きしめた。

それから暫く、夷隅は俺の胸に顔を埋めて泣いていた。



「すみません、会長」

夷隅は泣き止むと、さっさとお茶の準備を再開した。

俺はソファーに戻る。
< 99 / 281 >

この作品をシェア

pagetop