聖夜の忘れ形見
※※※
「小夜ちゃん?」
クラスメイトで、小夜が唯一仲良くしている柘植貴子(つげたかこ)の声に、窓の外を見ていた小夜は思わず体を跳ねさせた
いつから貴子が前の席に座っていたのか、まったく気付かなかったのだ
「あ…、えっと………。ごめんなさい、ボーッとしちゃってた。なぁに?」
何事もなかったかのように笑顔を作る小夜を見て、貴子は眉をひそめる
「また、京華院さん?」
「───っ」
「図星なのね?本当…あの方、何であんなに小夜ちゃんに突っかかるのかしら」
『だからお嫁の貰い手がないのよ』
肘をついて顎を乗せ、窓の外を向き呆れたように呟く貴子
江戸時代から続く呉服屋の長女である貴子は、この3月で地方銀行の頭取の次男を婿養子に迎え、学習院を中退することが決まっていた
「駿河さんとはうまくいってるの?」
まだ一度も婚約者と顔を合わせたこともない貴子にどこまで話していいのか悩みながらも、当たり障りのないことは伝えている
「小夜ちゃん?」
クラスメイトで、小夜が唯一仲良くしている柘植貴子(つげたかこ)の声に、窓の外を見ていた小夜は思わず体を跳ねさせた
いつから貴子が前の席に座っていたのか、まったく気付かなかったのだ
「あ…、えっと………。ごめんなさい、ボーッとしちゃってた。なぁに?」
何事もなかったかのように笑顔を作る小夜を見て、貴子は眉をひそめる
「また、京華院さん?」
「───っ」
「図星なのね?本当…あの方、何であんなに小夜ちゃんに突っかかるのかしら」
『だからお嫁の貰い手がないのよ』
肘をついて顎を乗せ、窓の外を向き呆れたように呟く貴子
江戸時代から続く呉服屋の長女である貴子は、この3月で地方銀行の頭取の次男を婿養子に迎え、学習院を中退することが決まっていた
「駿河さんとはうまくいってるの?」
まだ一度も婚約者と顔を合わせたこともない貴子にどこまで話していいのか悩みながらも、当たり障りのないことは伝えている