聖夜の忘れ形見
「だからといって、まだ結婚もしていないのに…」


「いずれは結婚する仲だ。どちらが先でも構わないだろ」


虎太郎の言葉に、静は唇を噛み締め、涙を流しながらその場から走り去った

開かれた障子の向こうに、綺麗にラッピングされた小箱を残して


「………虎太郎…さん」


何か喋らなければ、この空気に押し潰されそうで

小夜は小声で虎太郎の名前を呼んだ


「静が済まなかった」


体から虎太郎が離れ、小夜の心臓が大きく軋む

聞きたい、しかし聞いていいのだろうか

そんな想いで虎太郎を見つめた


「どうした?」


「………その…け、京華院さんは………虎太郎さんのお知り合いの…方………で…」


「あ、そうか。小夜には言ってなかったね。静は僕の従兄妹なんだ」


「従兄………妹…」


親族であるということに安堵し、そしてまた別の不安に駆られる


「虎太郎さんと京華院さんは………その…そういう………ご関係なんですか…?」


静の態度はただの従兄妹に対するものではないと、一瞬で気が付いた
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