聖夜の忘れ形見
「虎太郎…さん…」


───好き


だからこそ、虎太郎のことを考えると言い出だせなかった


女学部でいじめに遭っていることなど───


「この調子じゃ、当分はお預けだな」


「………おあ…ず、け…?」


言われている意味が分からず、小夜は首を傾げ見上げた


「そんな目で見るな。これでも必死なんだ」


「必…死………って…。何が…ですか?」


何て目で見るんだよ…


潤んだ瞳で見つめる小夜に、理性を保つので精一杯だ

自らの欲求のまま抱いてしまいたい衝動を抑えているなど知る由もない小夜は、虎太郎の右の手のひらを両手で包み込み、握り締める


「小夜」


「は…い………」


虎太郎の低い声に、怒られると思ったのかギュッと目を閉じ体を竦(すく)ませた


いつまで………我慢、出来るかな


深く溜息を吐き、小夜の額に唇を押し付ける
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