聖夜の忘れ形見
「鹿児島での、桜島噴火の記事を思い出しました。溶岩流で桜島と大隅半島が陸続きになったと───」


「小夜は聡明だな」


「え?」


「教員にでもなるといい。確か、初任給が15円だったかな。サイダーが150本買える」


「まっ!虎太郎さんったら、ひどいですわ!」


「あはははは」


小夜が振り上げた両方の手首を掴み、グイと引っ張ってその唇に口付ける


「小夜」


「…はい」


「そろそろ帰るよ」


ズキッと音を立てる心臓

会いに来てから、まだ1時間ほどしか経っていない

これから虎太郎が何をするのか

脳裏に悪いことばかりが浮かんで消えていく


「虎太郎さん」


「どうした?」


「虎太郎さん、お役場勤務…でしたよね?」


「ああ」


東京帝国大学出身で23歳の虎太郎

ということは、高等文官試験に合格した高等官ということになる
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