聖夜の忘れ形見
「失礼を承知でお聞きしたいのですが、虎太郎さんはいくらぐらいお給料をいただいてるのですか」


「70円」


「なっ───」


70円っ?!


小夜の目が見開かれた

何の目的があって聞いたのか分からないが、羨望の眼差しに少しだけ優越感に浸る虎太郎


「父が社会勉強だと言うからね。いずれは父の会社を継ぐさ」


ボスニアのサラエボで、オーストリア皇太子夫妻がセルビア人の男によって殺害された事件が発生

事件の1ヶ月後、オーストリアがセルビアに宣戦布告、オーストリアと同盟を組んでいたドイツが参戦

セルビアを助けるためロシアとイギリス、フランスが連合を組んでドイツに宣戦布告

そして日英同盟により、大日本帝国がドイツに宣戦布告した

造船業、製鉄業などが飛躍的に発展して近代化が進み、造船業を営んでいる虎太郎の父親は、いわゆる『成金』と呼ばれるほどの財をなしたのだ

一方の小夜も、家が昔からの大地主で高価なものに囲まれていたが、学習院に通うようになってから、毎月父親に小遣いとして1円をもらっているだけだった

さきほどのカステラが1箱40銭、前年に発売されたミルクキャラメルが10粒で10銭
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