君のとなりに
 桜が先にベッドに入り、その後で降谷もベッドに入った。少し振り返ると、降谷は桜に背を向けていた。なかなかに広いベッドであるため、多分二人ともお行儀よく眠ればぶつかることはないだろう。

「…降谷さん。」
「まだ喋り足りないのか、お前。」
「…降谷さんのことを好きだって言ったら、降谷さんは困る?」
「勘違いだと言うな。」
「…どうして?」

 降谷は桜の方に振り返らずに言った。

「…なんでも、だ。」
「答えになってなーい。」
「うるさい、寝ろ。」
「眠れない!」
「目を閉じろ。」
「…やっぱり、触ってもいい?」
「いいわけあるか。出るぞ。」
「それはだめ。」
「じゃあ黙って寝ろ。」
「…わかりました。」

 目を閉じても、微かに聞こえる呼吸の音に胸がドキドキして眠れない。

「…降谷さん。」
「なんだ?」
「…拾ってくれて、ありがとう。」
「人生の中で一番面倒な拾いものだった。」
「…それでも、捨てないでくれて、救われた。」
「そこまで非道な人間じゃない。」
「…それと、ね。…傍にいてくれて、ありがとう。今日一人だったら、死んじゃってたかもしれないから。」
「…いいから、寝ろよ。」
「はぁい。」

 それから桜は静かに目を閉じた。
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