アイスクリームの美味しい食し方
「俺、ノート書いてたでしょう?」

新は、
ゆっくり話し始めた。

「絶対に後悔すると思ったんです。」

「何を?」
私は聞いた。

「チカのお母さんが話したこと、
お母さんの様子、出来事、
一字一句こぼさずに
伝え切れるかって。

もし伝えられなかったら、
絶対後悔するって。
そんなの無理に決まってるのに。」

「うん。」

「チカ、ごめん。

ノートにいくら書いても、
いくら思っても、
全部覚えられなかった。
全部伝えられなかった。


お母さんは、
君のことをどれだけ思ってたか、
100分の1も伝えられない。」

新が泣いてるのが分かった。

「でも、
それでも毎日行ってくれた。」

「それが100分の1でも伝えられる
唯一の方法だったからだよ。」

私は目を閉じた。

涙は、
海の色と同じなのかな。

毎日、新がどんな気持ちで
母と会っていたかを
想像してみた。




胸が熱くなった。
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