アイスクリームの美味しい食し方
「ん?ここに立つのかな?」

私は、涙がボロボロこぼれることを
躊躇わず、
正面を向いた。

優しい笑顔で、ハート型の台に立つ
宗次郎さんがいた。

「な…なんで?」

私は、来るはずないと
思っていたので、もうそれ以外は、
言葉がない。


「心配しましたよ。
帰って来てるのに、
うちにも来ないし、
電話もないし。

と思ったら、
そんな可愛い格好して、
他の男に囲まれてるし。」

「え?」

宗次郎さんは、
少し怒った感じで言った。


「それに、お帰りって
言えないじゃないですか。」

そして柔らかく笑った。

「…なんで?」

私にはこの言葉しか出ない。

「あっ!あの!店長!
店長の気持ちを告白をしてください!」

チカちゃんが、
宗次郎さんに言った。

そう言えば、
あのハートの台って
告白したい人が立つんだっけ。

宗次郎さんは、軽く頷いて、
深呼吸をした。


「亜月。」

真っ直ぐ私は宗次郎さんを見つめた。

久しぶりに近くで見た宗次郎さん。
目尻にもともとあった
優しい笑い皺は濃くなって、
白髪もちらほらと目立ち、
痩せたようにも思う。

だけど、やっぱり私の王子様だ。
前よりもぐっとセクシーで
かっこいい。

私は、彼に見惚れていた。


「愛してます。
世界中で君だけを愛してるよ。」

先ほどまで叫ぶように告白する
高校生たちの声は、
一つも頭に残ってない。

静かで落ち着いた甘い声。
私には、絶対聞こえる声。

涙って、
悲しい時より
嬉しい時のほうが、
止まらないんだね。

私は、昔みたいに、
宗次郎さんに向かって、
突っ込んで行った。


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