アイスクリームの美味しい食し方
「で、王子がすごい形相で、
3年のお姉様を捕まえてね、
チカに手を出したら、
許さないって言ったのね。

でねでねーーー」

佐々 新は、
私のために走り回り、
その後、担いで病院に連れて来てくれたそうだ。

母に分からないよう、
違う病院にしてくれていて、
荷物も全部持ってきてくれていた。

鞄の中には、
お弁当の包みが入っていた。

包みを開け、
蓋を開くと
綺麗に食べ終えたあとだった。

鞄には、まだもう一つ袋が入っていた。

見覚えのない紙袋。



カサ…。
開くとそこには、
端が焦げてるアルバムが入っていた。

私は取り出して、
開いた。

幼い私とお父さんとお母さんの写真だ。


「うっ、くっ。

ありが…とう。
ありがとう。」

佐々新は、一昨日の夜、
彼のベッドで寝ていたのは私だ。
昨日の夜も
今日の昼間も彼はどこにいた?
ずっと私のために…。


えみは突然泣き出した私の背中をさすった。

本当に十分だよ。
私、どこでだって生きてゆける。

「チカ〜。
もう大丈夫だよ?
もう誰もチカにあんなことしないから。

大丈夫。

王子もえみも
チカのそばにいるからね。」


優しい人たちしか
最初からいなかった。

不幸なのは、
人のせいじゃなかったんだ。





いつだって、
私は、
大事なものを持っていたんだ。

気づかせてくれてありがとう。



お世話になりました。
私は、アルバムを胸に
泣けるだけ泣いた。


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