アイスクリームの美味しい食し方
朝の仕事が終わり、
お蕎麦屋さんにお暇をいただいた。

パートのおばさんたちも
お寿司屋さんのみんなも
応援してくれた。

いつもの防波堤に登り、
缶箱から、
クッキーを取り出した。

「私、東京に戻るよ。
覚悟が出来た。」

私はクッキーに話し続けた。



「私、ここに来てよかった。」

「力をもらったんだ。」

「とてつもなく大きな力に
負けないような
強くて優しい力なんだ。」


私は深呼吸して、
目を閉じた。


「だったら、もう会いに行けますね。」

甘い声がクッキーから聞こえた気がした。


「うん。
もう大丈夫だよ。」



私は、ゆっくり目を開いた。



あの苦手だった甘い笑顔が
目の前にあった。

私の顔を覗くように、
防波堤に彼がしゃがんでいた。



「じゃぁ、帰ってこい。」


クッキーは、
あいつに変身したのかと
思った。




「言ったでしょう?


好きになってもらうって。」



私はクッキーの袋を
開けて、
震える手で、
それを取り、
ひとかけらも残さず
食べ切ってやったんだ。


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