ますます監禁されますが、お仕事です

ーー

「ぜえ、ぜえ。す、すみません。今は、新垣さんのそばにいることが仕事なのに。前の仕事を思い出して。節電とかで暗くなる社内で、もくもくとサービス残業をして」


「はい、待った」

酸欠気味の体に、彼の空気が送り込まれる。人工呼吸には程遠いが、私の口を塞ぐには事足りる口付けだった。

「俺以外のことは、思い出さなくていい。俺も君以外のことは、頭に入っていない。それだけ君に夢中なんだ。他のことなんか、気にも止められない。石ころに意識を向けないように。石ころだらけの道にある、花に目が行ってしまうように、俺にとって君は」

「新垣さん、スマホ鳴ってます」

「気にしなくていいよ。俺は気にしない。雨音以外のことなんか、どうでもいいに決まっているのだから」

「新垣さん、スマホの着信履歴が『上司、田中』なんですが!?」

「俺以外の男の名前を口にするのなら、また塞ごうか。今度は、もっと激しく」

「上司からの着信を無視するなああぁ!」



※自他共に仕事に厳しい社畜は、ときめきクラッシャー。

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