キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
7・鬼より怖い女
「おはようございまーす……」
寝起きドッキリかのように声をひそませ、警備システムを解除すると、そのまま2階の寮に向かう。
寮のドアは、鍵がかかっていない。まるで、私が来るのを待っているかのよう。
そっとドアを開けると、出勤前の店長がコーヒーを飲みながら、ニュース番組を見ていた。
「おはよう。今日は早いな」
「おはようございます。あの、これ……夕飯の足しにしてください」
持ってきたトートバッグを差し出す。
中身は、タッパーに詰めた手作りのおかず。
「……別に、毎日持ってくることないんだけど。飯が欲しくて、お前と付き合ってるわけじゃないし」
若干困ったような顔で、店長が言う。
「め、迷惑でしたか?」
「そんなこと言ってない。嬉しいよ。けど、時間も金もかかるだろ。無理はしなくていいから」
店長は私からトートバッグを受けとると、中身を冷蔵庫の中に入れる。
つきあおうと言われた翌日から、私はせっせと寮暮らしの店長のために、おかずを作って持ってきていた。
舞い上がって、とにかく何かしてあげたくて、うっかり毎日持ってきちゃったけど……もしかして、私って、重い!?うざい!?
一人でおろおろしていると、矢崎店長は綺麗に洗って乾燥させたタッパーを返してくれた。
「昨日の肉じゃが、うまかった。ありがとう」
ぽんぽんと頭をなでられ、ぱああと脳内にお花畑が広がっていく。