キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
嫌がられてはいない……んだよね?
付き合い始めてまだ1週間、まだまだ店長の表情が読みきれません。
出勤前の店長は、まだネクタイをしておらず、それがなんとも言えない色気を醸し出している。
「さ、誰かが来る前に、先に下に降りてろ」
「あ、はい」
つきあっているのは、二人だけの秘密。
矢崎店長は仕事中は今までとなんら変わらない。
閉店後に駅で待ち合わせをして食事をしたことはあるけれど、それ以上の発展はまだ。
つきあって1週間でキス、一か月でエッチが理想、だなんて大学生の頃は思っていたけど、既に私もいい大人。
あまりにも手を出されないので、自分には大人の魅力が足りないのでは?と悩むことも。
まあ、あの矢崎店長が嫌いな相手とつきあおうなんて言うわけないし、きっと相手が部下だから、慎重になっているのだろうと思うことにしている。
菜穂さんに告白されて、断ったらこじれて面倒なことになったという過去もあるし。
そっとドアを閉じ、一階へと降りていく。
一緒にいる時間が少なすぎて、私はいまだに店長が私のどこを好きになったのかさえ、聞き損ねている。
大人になったら、そういうことをいちいち語り合ったりしないものなんだろうか。
「いやいや、まだ1週間だもん。しっくりしていなくて当然だよね」
独り言を言いながら、お店の掃除を始める。
と、長井くんが出勤してきた。