キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
しまった。接客中に隠れるわけにもいかない。
「じゃあ、これにするからお会計を」
しかもタイミングの悪いことに、視力検査もフレーム選びも終わってしまった。
「はい、かしこまりました」
レンズの説明もあらかじめしてあったので、あとはレジを打つだけ。
そのレジは、菜穂さんの目の前にある。
困った。非常に困った。
「あれっ、どうしたんすか」
菜穂さんに気づいた長井くんと杉田さんが、奥から出てくる。
「お久しぶり。平尾さんは?」
「残念。今日はお休みです」
「あら、そう。本当に残念」
何しに来たのよ……メガネ買わないなら帰ってよ。
お客様がクレジットカードを差し出す。
ああ、とうとうレジへ向かわなければならない。
「矢崎君は?」
気配を消してレジの方へ向かうと、店長の名前が聞こえてどきりとした。
「休憩中です」
「ふうん……都合がいいわ。ねえ、長井くん。あの人、彼女がいるの?」
「えっ?さあ……知りませんけど」
長井くんは近くにお客様がいるのを気にして、菜穂さんをさりげなく入口付近の待合スペースへと誘う。
ナイス、長井くん!
今のうちにとカードをスキャンし、会計を済ませる。
あとはサインをもらって、引換証を渡すのみ。