キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「あの人はきっと受かるわ。落ちる理由がないもの」
「…………」
「この地区を離れる予定があるから、店の女の子に手を出しても、あまりゴタゴタせずに別れられる。自然消滅すればいいやと思ってるのよ」
このひと、やっぱり怖い。
全部自分の思い込みが正しいと思って、それを信じて疑ってないみたい。
いったい、矢崎店長の何をわかってるって言うんだろう。
「それが本当なら、あなたはどうしてまだ店長に固執するんですか?」
誰だって、最初から遠恋をしたくてする人はないはずだ。
仕方なく遠恋になってしまうといった恋人たちがほとんどじゃないの?
「私はすぐにこの土地を離れて、矢崎くんについていく覚悟ができてるもの。彼となら、いつ結婚したって構わないわ」
ええと……?
きっぱりとおっしゃっていますが、それってフラれてから全く相手にされてない人が言うセリフではないのでは。
いつ結婚してもいいなんて、何年かつきあった人どうしが言うものじゃないの?
やっぱりこの人怖い。思い込みが激しすぎて、とてもじゃないけどついていけない。
「菜穂さん、いい加減にしてください」
困り果てていると、また自動ドアが開く音がした。
振り返ると、長井くんが怖い顔で近寄ってきて、私の腕から菜穂さんの手を放させる。
「はっちゃんに八つ当たりしないでください。これ以上嫌がらせするのなら、営業妨害で訴えますよ」
そうだそうだ!こんな店の目の前で!
心の中で長井くんを応援する。